2016年9月3日土曜日

熱化学と電気化学と自由度

本来、熱力学と電気化学も、物理化学の中の一分野なのですが、
それらを統一した理解することが、学問領域の細分化された最近では
なかなか為されているとは言い難いと感じます。


工学のための物理化学 -熱力学・電気化学・固体反応論- (サイエンス社、2006年)


















たとえば、熱力学を研究している人にとっては、
系の自由度を考えるのは常識です。
しかし、電気化学の分野の人は、あまり規定することがなく、
量論で議論をしている報告が多いです。

実際の物質の挙動は、学問分野の分け方には関係が無いわけで、
当然、電気化学反応を考える上でも、自由度については考慮すべきで、
それを規定しない中での議論は、
平衡論の議論として成り立たっていないこととなります。


その点を考慮し、
自由度を踏まえた上で行った電気化学反応の平衡論計算について、
最近、論文を1報発表しました。URLはこちら

Kouji Yasuda, Yusuke Kashitani, Shingo Kizaki, Kohki Takeshita, Takehisa Fujita and Shinji Shimosaki,
“Thermodynamic Analsis of Silicon Monoxide Negative Electrode for Lithium Ion Batteries”

Journal of Power Sources, 329, 462-472 (2016).



リチウムイオン二次電池の負極として使用する、
SiO(一酸化ケイ素)に関する、理論平衡曲線をプロットしています。
また、Si負極でも、表面酸化膜が必ずありますし、
粉砕して作製したSi負極は酸化物が多く生成している可能性もあります。

Li基準で、0.5~1.2Vあたりに、
それらからLiシリケートが生成する電位プラトーが見られ、
その後にSiがLiと合金化する反応が計測されます。


同じ手法は別の系でも適用可能ですので、
電気化学反応による電極組成の変化について熱力学計算をおこなう場合、
役立つ内容になっているかと思います。

2016年8月12日金曜日

オープンキャンパス

今週は、京都大学でオープンキャンパスが開催されました。

35℃を超える猛暑の中、
高校生はもちろん、親御さんの姿も多くみられ、
ご参加いただいたことに感謝いたします。


朝から夕方まで盛況でした













そんな中、目を引いたのが、
キャンパス内で看板を持っている女子学生が多くみられたこと。
看板を見ると、「テク女子」と書いてありました。


今まで学内におりながら知らなかったことを恥ずかしく思うのですが、
どうやら数年前から開催している、
「工学部に興味のある女子学生」をターゲットとした
講演会や懇談会なんですね。

昨年ノルウェーへ出張した時、
向こうでは、金属工場で勤務している方の男女比が
ちょうど半々だったことに驚いたのを思い出します。


工学に興味があれば、 
男子でも女子でもどんどん京大へ来てほしいのですが、
事前に情報を得られることで、少しでも飛び込んできてくれるのであれば、
とっても喜ばしいことですね。

2016年7月29日金曜日

電気化学の巨人

今まで4年近く一緒に研究していた
楊 肖 特定助教が、5月いっぱいで退任し、
6月からはアメリカのUniversity of Texas Austinへ異動しました。

彼の新しい勤務先は、
Allen J. Bard教授の研究室です。

電気化学を学ぶ人ならば、
皆が書棚に1冊は持っているであろう。
Electrochemical Methodsを執筆者である先生です。
彼の名を知らない人は、
電気化学の分野での「もぐり」ではないかというくらいの、超有名人です。


安田も1冊持ってます


















この書籍も初版が1980年で、36年も前の本になります。
その当時から、書籍を執筆するなどアクティブだった先生が、
今もなお現役でご活躍とのことに驚きです。
もう80歳を超えておられるのだとか。


そんな折、溶融塩化学講習会(実験講習会)の準備を進め、
過去の溶融塩の書籍やデータベース文献などを
探してリストアップする作業をしていたところ、見つけました。
またもや、Allen J. Bard先生。

Encyclopedia of Electrochemistry of the Elements
こちらの初版は1973年
今から、43年も前のことです。


研究室の書庫には所蔵がありました


















今と違って、 インターネットも無い時代。
文献を集めて、それらの数値をデータベース化するなど、
どんなに大変だったろうと思います。

玉石混交の星の数ほどの論文が出回っている時代ではなかったので、
文献の数も絞られていたとはいえ、
分野の巨人というのは、極めて偉大だと感じました。

2016年7月19日火曜日

チタン円卓会議

先週、北海道で開催された、
5th International Round Table on Titanium Production in Molten Salts (Ti-RT2016)
に出席いたしました。

金属チタンは、高耐腐食性や高比強度などを有する金属で、
航空機材料や化学プラントなどに利用されています。

近年、現在の量産製造法であるクロール法に替わる、
新しい製錬法や製造法に関する研究開発が活発で、
その研究者を集めた会議が、今回のシンポジウムとなります。


私も今回は、国際学会で初の国内実行委員として、
名を連ねさせていただきました。

北海道大学の夏井先生を初めとする事務局の適格な働きぶりもあって、
多くの参加者が、学会に満足されて帰られていたのが印象的でした。

次回は2年後の開催ということですが、
また皆様にお会いできることを楽しみにしております。


北海道大学から洞爺湖へ移動しながらの学会でした

2016年6月21日火曜日

蒸発を抑える

本財団の研究成果の一つであるのですが、
蒸気圧が高く、蒸発しやすいものの蒸発を抑える方法があります。















アイデアとしては、
小学校の教科書から取ってきました。

試験管に水を入れておくと、徐々に蒸発していってしまいます。

しかし、上の写真のように、
水の上に油の層を張っておくと、水は蒸発しないのです。


正確に言うと、
「水の溶解しない液相を上側に乗せる」と、
蒸気圧が1気圧を下回る温度では、ガスのバブルが発生することが
できず、蒸発することができないのです。


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我々の研究では、
蒸気圧の高い金属を、
 溶融塩という液体の底に沈めることで、
 蒸発をほとんどさせずに取り扱うことができる」
ということを、研究に応用しています。

実際には、形態はわからないものの、
溶融塩に若干溶解しているようで、ごく少しずつ蒸発はしますけどね。
ほぼ無視できる量です。


こういう、ちょっとしたことから、
研究というのは進展したりするんですよね。
ある意味、醍醐味だと思います。

2016年6月9日木曜日

電位-pO2-図の作成

反応の起こる方向をビジュアル化すると、
多くの理解が深まることがあります。

装置や溶液を可視化することもそうですし、
今、我々が取り組んでいるのは、
電気化学反応における化合物の安定領域を、
電位や酸化物濃度のグラフとして図示する手法で、
「電位-pO2-図」 と呼ばれるものです。


ただし、手法自体は新しいものではなく、
水溶液中では同様の手法は「電位-pH図(でんい-ペーハー図)」 もしくは
発表者の名にちなんで「プールベダイヤグラム」と呼ばれます。

電位-pO2-図は、水溶液ではなく、
NaClのような塩が溶けた「溶融塩」中での電気化学反応を解釈する
ために作成されるもので、
1962年にR. Littlewoodが発表した手法です。


計算法としてはすでに確立されておりますが、
どのデータをもとに計算するか、どの溶融塩中の反応について考察するか、
で結果が変わってきます。
そのため、 元データの厳選が肝となります

昨日は、色々な系について調べました。
実験結果を説明できるものもあれば、できないものもあり。
あくまで、平衡論に基づいた解釈法なので、
速度論的には違う反応が優位に起こることもあり、
実験データと組み合わせて利用するのが望ましいです。

昨日のホワイトボード、数多くの系に関して計算しました

2016年5月15日日曜日

研究所20周年記念式典

先週に研究室同窓会を行った、
エネルギー理工学研究所ですが、
本日は、研究所発足20年の記念式典が行われました。


宇治キャンパスのきはだホールで開催














エネルギー理工学研究所は、
原子エネルギー研究所とヘリオトロン核融合研究センターを統合し、
「地球環境・エネルギー問題の解決」を目標として
設立された研究所となります。

大学院としては、
全国ではじめて「独立大学院」(学部を併設しない大学院)として
設立されたエネルギー科学研究科の学生を
兼担先として受け入れる、などという
歴史的な経緯で設立されています。

私は現在、エネルギー科学研究科の助教を兼任しておりますが、
全国初の独立大学院のテーマとして、
「エネルギー」を掲げようとした、当時の思想に、
私が関与しているエネルギー・材料分野の重要性を
ひしひしと感じ、これからの努力の糧としたいと感じた1日でした。



山極総長からの祝辞

懇親会での鏡割り

2016年5月10日火曜日

複合化学過程研究室の同窓会

5月7日の土曜日、
私が博士課程に所属した、
京都大学エネルギー理工学研究所 複合化学過程研究室の同窓会
開催されました。

複合化学過程分野は、
現在、安田の共同研究先である野平研究室となってます。
そのため、自分も世話人に名を連ね、
懇親会後には、僕の方で現研究室の案内も実施しました。


先々代の岩崎研、先代の尾形研の同窓会でした











 




先々代の岩崎教授と、先代の尾形教授だった頃に所属された、
OBとOGが約25学年ほどにわたってご参加いただきました。

長らく開催されなかった同窓会のため、
皆、昔の話から近況まで、多くの話に花を咲かせており
世話人としてもOBとしても、大変うれしく感じた1日でした。

一昨年に天国に旅立たれた尾形先生も、
きっと、皆の顔を見て喜ばれていることと思っております。


岩崎先生からの乾杯挨拶

全45名程度での集合写真

2016年4月15日金曜日

この問題を解いてみろ!

2016年1月から、
資源・素材学会の会報誌「季刊 資源と素材」に、
毎号、連載を持つこととなりました。

その名も、
「安田&畑田の この問題を解いてみろ!」
という記事です。

企画の趣旨としては、
金属製錬の分野で必要な、熱力学や電気化学に関して、
計算問題を与え、Excelなどの身近なツールを用いながら、
どこよりも丁寧に解説する。
というものです。


今まで、バイトしていた塾で定期試験の問題を作ったり、
研究室旅行のためにクイズ大会を作ったりはしていたのですが、
学術レベルの問題作成は初めてです。

季刊なので3ヶ月に一度の執筆ですが、
ほんの細かいところの表現や定義まで気になり、
今まで以上に、教科書や参考書を読み返してしまいます。
(写真の後ろにうつっているのも、他の問題集です)

とは言え、
読者としては企業の若手社員や大学院生をターゲットとし、
趣旨がどこよりも丁寧に解く、ということを大切にしています。
そのため、あまり難しい方向に行かず、
できるだけ易しい言葉を使って、それらの方々が
自力で他の問題集へ取り掛かれるようなレベルへのスキルアップに
というスタンスを持ち、 続けていきたいと思います。


見事なレイアウトに仕上げていただいた編集に感謝

2016年4月7日木曜日

研究室花見

昨日4月6日(水)、
エネルギー科学研究科の萩原研究室に
新4回生が配属になりました。
新M1は4月1日から参加しているので、新メンバーも揃ったということで、
吉田キャンパス内で花見を行いました。

昨年、一昨年と、小雨だったり寒かったりとで、
集合写真の時だけ桜のところへ移動していた花見でしたが、
今年はちゃんと桜の木の下で花見ができました
幸先の良い1年になりそうですね。


時計台の裏で花見

2016年3月6日日曜日

2015年度 大掃除と研究室送別会

ウチの研究室では、
3月の第1週に、一週間をかけた大掃除を行い、
金曜に追いコン(送別会)を開催する伝統があります。

大掃除だけでなく、
卒業生が今までに残してきた実験サンプルのうち、
後輩へ引き継ぐものは手渡して、廃棄するものは廃棄する、
という時期でもあります。
装置のノウハウや管理に関する引き継ぎも行いますね。


今年は、2つの部屋について、
大きな配置換えを行いました。
私は大きな方の実験室の指揮系統で。。。


使えない本棚は廃棄して


メタルラックを組み立てて


倉庫を作り上げ、
広く使える整理された状態にしました





































という、写真のような感じで、
実験室を広く効率的に使えるようにしました。
ポイントとしては、
装置を配置するのではなく、通路を作り上げること、ですね。


そこで、わかったこと2つ。


1.重量のある装置に6人は必要と思っていたところ、
  外国人が入ると3人でオーケー。

2.メタルラックを組み立てるのに、
  やけに外国人メンバーのテンションが高い!


という、遺伝子の違い(!?)を感じました。

まぁ、皆楽しそうなので良かったです。



追いコンで乾杯のあいさつをする萩原教授











そんな1週間も終わり、昨日は追いコン。
皆に卒業の色紙とプレゼントが渡され、夜も更けていきました。

卒業してもみんながんばるんだよ。

2016年2月24日水曜日

11th Reactive Metal Workshop への参加

2016年2月19日(金)~20日(土)に
アメリカボストンにあるMIT(マサチューセッツ工科大学)で開催された
11th Reactive Metal Workshop (RMW11) へ参加いたしました。
共著者からの口頭発表×1件、私からのポスター発表×2件、を行っております。


RMW11での講演風景














通常の学会では多くの参加を募るものですが、
RMWでは、より深い議論ができるよう、
少数での開催が行われるワークショップです。

ですので、このワークショップに参加できること自体が、
ある意味ではかなり名誉なことかと思います。

また、少数での開催であるため、
気心の知れたメンバーが参加し、
参加者間でのフレンドシップ、パートナーシップが強いといった
特徴のある会合だと思います。

昼食もランチボックスを囲んで、話をしながら














個人的に、今回結果として驚いたのは、
東大から来られていた事務方を除き、1枚も名刺を配ることがなかったこと!
すなわち、すでに仲の良いメンバーばかりであって、
配る必要が無かったのですね。


だいたいの場合、海外出張などは、
学会への参加を目的に行くことが多いのですが、
今回のワークショップでの打ち合わせをもとに、別のことを計画中です。
具体的には、今年中に、ウチの装置を改良すべく、
海外の研究室を訪れて、装置改良のための設計を行ってこようかと。
お互いの信頼関係のなせる業ですね。

これからも、グローバルな関係を構築して、
最先端の研究 を、この場でも発表できるようにしていきたいと思います。



ポスター発表での風景






日本からの参加者と、アメリカ側スタッフ(左から2番目と一番右)
お互いすでに顔なじみです

2016年1月25日月曜日

開発中のケイ素メッキ法

私の専門分野である
溶融塩化学や電気化学を用いると色々な金属のメッキができます。

また、ここ最近の新しい研究としては、
ケイ素(シリコン)を電気メッキする新しい手法を開発しています。


通常、電気めっきには水を溶媒に用いますけど、
我々が用いる溶融塩電解質は、水中ではメッキできない金属でも
物質の表面にメッキすることができます。
ケイ素もその1つですね。

まだあまり、ケイ素が電気メッキできること自体、知られていない面
ありますので、我々の研究から新しい用途が生まれるといいですね。
(できれば、この記事を検索して、世の中のヒントになれば。。。)
と思いつつ、研究を行ってます。


いやー、何かのいいものに使えたらいいな!



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論文へのリンクはこちら。

(1)
論文1
 概要: 新しい電解液を使って、650℃でのケイ素メッキ法を開発

(2)
論文2
 概要: 厚さ50ミクロンの平滑ケイ素メッキ膜を得るための条件

2016年1月14日木曜日

初授業

今週の火曜日(12日)に、
リレー講義の1コマの授業を行いました。

一般教養の授業で「放射線概論」。
1回生向けの授業です。


学会発表や、教員向け講習は
慣れたものなのですが、学生向けの授業は初めてです。

大学1回生向けの一般教養の授業となると、
彼らは、年齢が自分の半分くらいなんですね。。。


大学教員は研究者であり教育者でもありますし、
これからの一歩と思い、正月をかけて
とても念入りに準備をして授業にのぞみました。

これからの長い教員人生、こういう生活が続いていくんですね。
少しずつ努力を続けていこうと思った新年でした。




一般教養の授業は吉田南キャンパスで

亜鉛還元による太陽電池級シリコンの高速連続製造法に関する研究

安田 幸司
(京都大学 環境安全保健機構 助教)