それらを統一した理解することが、学問領域の細分化された最近では
なかなか為されているとは言い難いと感じます。
工学のための物理化学 -熱力学・電気化学・固体反応論- (サイエンス社、2006年) |
たとえば、熱力学を研究している人にとっては、
系の自由度を考えるのは常識です。
しかし、電気化学の分野の人は、あまり規定することがなく、
量論で議論をしている報告が多いです。
実際の物質の挙動は、学問分野の分け方には関係が無いわけで、
当然、電気化学反応を考える上でも、自由度については考慮すべきで、
それを規定しない中での議論は、
平衡論の議論として成り立たっていないこととなります。
その点を考慮し、
自由度を踏まえた上で行った電気化学反応の平衡論計算について、
最近、論文を1報発表しました。URLはこちら。
Kouji Yasuda, Yusuke Kashitani, Shingo Kizaki, Kohki Takeshita, Takehisa Fujita and Shinji Shimosaki,
“Thermodynamic Analsis of Silicon Monoxide Negative Electrode for Lithium Ion Batteries”
Journal of Power Sources, 329, 462-472 (2016).
リチウムイオン二次電池の負極として使用する、
SiO(一酸化ケイ素)に関する、理論平衡曲線をプロットしています。
また、Si負極でも、表面酸化膜が必ずありますし、
粉砕して作製したSi負極は酸化物が多く生成している可能性もあります。
Li基準で、0.5~1.2Vあたりに、
それらからLiシリケートが生成する電位プラトーが見られ、
その後にSiがLiと合金化する反応が計測されます。
同じ手法は別の系でも適用可能ですので、
電気化学反応による電極組成の変化について熱力学計算をおこなう場合、
役立つ内容になっているかと思います。