2015年8月15日土曜日

耐震対策

夏休み前に、夏の大掃除を行い、
研究室の整備と整理を進めました。

しかし、先日、学内点検で耐震対策などの強化を求められたため、
この夏休みを使って、
実験装置や器具の固定を進めています。


棚の両端にひっかけるだけ












ホームセンターからゴムロープを買ってきて、
それを棚の両端にひっかけます。
元々は、自転車の荷台に荷物を固定するためのロープですね。


多くの研究室で、耐震対策に困っているということなので、
ぜひこの方法をお試しください。
簡単かつ大きな効果が得られますよ。

2015年7月3日金曜日

四塩化ケイ素の後処理

反応を起こして実験をするという「表」があれば、
実験後の残留薬品の処理という「裏」もあります。


四塩化ケイ素(SiCl4)の処理というのは、
廃試薬専門業者にとっては容易かもしれませんが、
小規模実験を行う研究室では、ちょっとやっかいです。

というのも、
四塩化ケイ素は空気中に出すと、
水分と反応して塩化水素(HCl)を発生するので、
下手をすると、
 ・ノドと鼻がするどく痛い
 ・周辺の装置がサビる
といった不具合を生じるからです。


このように、塩素成分がHClになるとやっかいなので、
水素(H)よりも強い陽イオンと反応させるのが良いです。
私が知るところでは、
水酸化ナトリウム(NaOH)を入れて水ガラスにしてから、
酸性に戻すと、ケイ酸と塩化ナトリウムになるので、
大学では無機廃液のタンクへ捨てることができます。
(ただし、京大の場合、ケイ素を含む廃液は他とは別容器)


しかし、それよりも簡単な方法があります。

SiCl4は構造的な対称性が高いことからもわかるとおり、
極性のきわめて低い化合物です。
そのため、水には溶けにくいですが、油やアルコールにはよく溶けます。

それにしたがって、
今日、研究室の過去サンプルから出てきたSiCl4を廃棄する作業は、
 「SiCl4の封入されたガラス管を割った後、
  真空ポンプ用オイルにガラス管を浸す」
のみでした。


液体SiCl4をそのままオイルへ











オイルが反応して茶色くなるので、
あとは、廃オイルとして捨てれば終了。

反応が遅くて溶けのこったSiCl4が
ちょっと鼻に刺激臭を与えるので、
保護具着用の上、作業は必ずドラフトの中で行いましょう。

2015年6月25日木曜日

国際溶融塩学会

今月の10日から14日に中国の瀋陽で開催された、
第10回溶融塩化学技術に関する国際会議
(10th International Conference on Molten Salt Chemistry and Technology; MS10)
に参加してまいりました。

また、今回は
第5回アジア溶融塩化学技術合同会議
(5th Asian Conference on Molten Salt Chemistry and Technology; AMS5)
として同時に開催されております。


日本の溶融塩委員会委員長 鈴木先生も基調講演をされました














国際学会では多く発表しているものの、
個人的には、これが初の中国であり、
どのような国なのか、若干の不安とともに興味津々で参加させていただきました。

この分野の代表例として、
アルミニウムの電解製錬があります。
現在、中国がアルミニウムの世界生産の約半数を占めており、
ここ10年で世界シェアを5倍~10倍程度に増やしております。

会議自体は、中国国内からの参加者も多く、
だいたい7割程度は中国からの人でした。
日本ではすでにアルミニウムの電解製錬は行われておらず、
該当分野の中国での活発さを、多くの参加者と発表から伺い知ることができました。




また、今回の学会では、
昔、日本に来ておられた中国人研究者とも再開することができ、
非常に多くの歓待を受けました。
中国人のホスピタリティ精神には、感謝しています。

彼ら曰く、
「中国での溶融塩や電気化学の研究はまだ歴史が浅く、
 日本から多く学ぶべきことがある。」
と述べ、グローバルパートナーシップの大切さと、
日本にその中心を担ってほしいということでした。

今後とも色々な形で、
全世界との協力体制を築いていきたいと感じた
今回の学会出張でした。


一番右が、当研究室の元ポスドクGaoさん


真ん中が、私の東大時代に博士課程学生だったZhengさん








2015年5月28日木曜日

高温電気化学の精密測定

昨年まで、私の研究室の准教授であった野平先生が、
1月から京都大学エネルギー理工学研究所の教授へ昇任されました。

私と一緒に高温電気化学をはじめとした
共同研究を行っており、研究室の学生が用いている装置も、
新しい研究室へと移動いたしました。
そのため、私自身も学生とともに、
共同研究先の野平研究室へとデスクを置かせていただき、
装置の復旧と立ち上げ作業に、春はいそしんでおりました。



電気炉の立ち上げ中、ボンベも仮配置です













実験装置、分析装置のレイアウト案です















ゆえに、
・萩原研究室(吉田キャンパス)
・萩原研究室(宇治キャンパス)
・野平研究室(宇治キャンパス)
の3ヶ所を移動しながら、
学生の研究指導や、核燃料物質の管理業務を行ってます。


3ヶ所のうちどこにいるかを、マグネットボードに掲示














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さて、そんな中、
修理中だった電気化学測定装置の1つが返ってきました。

この装置の良いところは、
IR補正の性能が良いところです。


電気化学測定を行う場合に、
電位をある一定の速度でスキャンし、電流の応答曲線から
電気化学反応の速度論を評価する手法があります。
通常は、たとえば100mV/sの速度でスキャンすると、
電極表面にかかる電位は、1秒あたり100mVずつ変わっていきます。


しかし、電流を流す際には、IRドロップというものがあります。
電流値(I)や電解浴抵抗(R)が大きいと、
電極にかけた電位が、電極と電解質の界面に全てかかるわけでなく、
電解浴内部での電圧ロスにかけられてしまいます。

そのため、100mV/sの速度でスキャンしても、
電極表面にかかる電位は、たとえば1秒あたり90mVずつしか変わらず、
速度パラメータの評価が正しく行えません。



無事に返ってきました













今回戻ってきた装置は、
特に高速スキャンに対するIRドロップの補正機能が高く、
今までに測定したデータを、先日再測定いたしました。
学会用のデータも修正することとなりそうです。

こういったIR補正機能は、
電流の大きな高温での電気化学測定では、
精密データを得るのに特に重要になってくるのです。



補正前後のデータ。補正後はピークが鋭く。

2015年4月6日月曜日

Si-Zn合金を使ったシリコン製造法の成果発表

私は、太陽電池用途に用いる高純度シリコンの製造法に関する
研究を行っております。

本助成で行ったテーマは、
SiCl4(四塩化ケイ素)をZn(亜鉛金属)で還元し、
Si-Zn合金(シリコン-亜鉛合金)を中間生成物として
高純度シリコンを製造する手法ですが、
最近、電解法による、Si-Zn合金を中間生成物とした高純度シリコン製造法
に関する論文を発表いたしました。


著者: 安田幸司
題目: 液体亜鉛合金を用いたシリコンの電解製錬法の開発
書誌: 溶融塩および高温化学, 58(1), 20-27 (2015).


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ホール・エルー法の原理図















出典: http://ja.wikipedia.org/wiki/ホール・エルー法




上に示すのは、金属アルミニウムの製造法である、
ホール・エルー法の原理図です。

酸化アルミニウムを、
約1000℃の溶融塩と呼ばれる電解質中で電気分解する
手法により、陰極で金属アルミニウムが作られています。


今回発表した論文では、
過去に我々で開発してきた電解法を、
ホール・エルー法をベースにして連続化や大型化するには、
どのようなプロセス原理が必要かという点について、
合金化金属の種類、電解温度などについて、各種検討を行っております。

各々の実験データについては、
今後、それぞれ論文発表していきたいと思います。

2015年4月2日木曜日

2014年度後半からの近況

ご無沙汰しております。

学会でお会いした人から、
「最近、研究ブログ、更新してないんですね」
と言われました。

国際科学技術財団の知名度とともに、
私のブログのファン(?)らしき方がおられることに
驚いております。


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さて、何故、更新が最近ご無沙汰になっているかと
言いますと、ここ半年ほど私の職務の1つである
核燃料物質の管理に関する業務が増えているからであります。


4年前の3月に東日本大震災が起こり、
3年前の9月に核燃料物質の管理の担当行政が
文部科学省から原子力規制委員会に変わり、
一昨年の11月には、原子力規制委員会から
新規制基準と呼ばれる新しい審査基準ができました。

そのため、原子力発電所だけでなく、
大学の研究施設においても事故時への対策が求められるようになり、
全国の大学でも、審査への対応に追われていると聞いてます。


世の中の情勢に合わせて変化していくのは、
生活や研究のみならず、法律も満たすべき基準が変わっております。

新年度となり、
教育や研究との両立に苦慮しておりますが、
いずれもクリアすべきタスクを達成できるよう、
進めてまいりたいと思います。

2015年1月11日日曜日

本年もよろしくお願いいたします

昨年同様、新年の初日は、
大学前の吉田神社へ新年祈祷に行ってまいりました。

祈祷の甲斐あってか、
昨年は事故や大きな病気のない1年でした。


事故などのない1年でありますように













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さて、2014年の最後2か月半は、
研究室内での事務仕事が立て続けにあり、
デスクワークに追われておりました。

最近やっと少し落ち着いた感があるので、
日曜出勤ですが、自分の研究にかかれるようになりました。


でも、ふと思い起こすと、
去年の1月にも日曜にそんなことをしていたような。。。
 
日々コツコツと
勉強と研究を進めていきたいと思います。
亜鉛還元による太陽電池級シリコンの高速連続製造法に関する研究

安田 幸司
(京都大学 環境安全保健機構 助教)