2013年10月23日水曜日

学生への新装置

私が行う実験というのは何通りかあります。

 1.自分自身で実験を行うテーマ

 2.今後に向けて新しく立ち上げるテーマの予備実験

 3.学生が新しい段階を迎える際の実験ヘルプ

 4.卒業してしまった学生のデータを、改めて取り直す必要が出たとき

大まかに分けて、上のような感じです。


なお、本助成でいただいているテーマは、
1.で自分自身で実験しています。

実験を打てば、学生よりは期待通りにデータは出るのですが、
大学教員は色々と仕事があるので、
実験する時間がなかなか取れないのが、皆の悩みであります。。。


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さて、先週は、1.自分のテーマへ向けて、
SiCl4の供給装置を組み立てておりましたが、
今週は別の新装置を組み立てております。

3.学生のテーマのヘルプです。


M1の前田君です















装置構成をふくめて、色々とトライしました。


今日は、ガスが詰まりました。
ガスが漏れました。

配管を抜きました。つなぎました。
配管がサビました。

熱いものを急冷させないといけなくて、
水に入れ、激しく湯気を出しました。



などなど、色々とトライし、
ようやくデータが出るところまで、こぎつけました。


電極には、ヤスダの名。置いている時に間違われないように。














そして、出たデータが悩ましい

いいデータのような、よくないデータのような。。。

悩む悩む
そして考える。また考える

これこそが研究者の醍醐味ではないかと思います。



まぁ、彼のテーマなので、
今回の立ち上げ以降は、この悩ましさも彼に引き継ごうかと思います。

2013年10月17日木曜日

SiCl4供給装置と石英反応管

8月22日の記事で書いていたように、
実験をする時間がない引っ越し期間にも研究が進むよう、
その間に製作を進めていた石英反応管が、
完成して先々週の末に納入されました。

本助成の経費で購入させていただきましたので、
報告させていただきます。

図面通りピッタリ














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上の反応管は、内部に四塩化ケイ素(SiCl4)ガスを流して、
高温で反応させるのに使うのですが、
SiCl4を送り込むための装置というのも作る必要があります。


できたのがこちら。

シンプルですが、定量的に供給できます














見ての通り、かなりお手製の装置構成です。


白いホース: アルゴンガス供給ライン
緑のボトル: SiCl4保持容器
プラスチックの箱: 恒温槽となる水の容器
黒いホース: 恒温槽用の装置から水を送り込むライン


昔、東京大学でポスドクをしていた時代に
ほぼ同じものを作っていたので、あっさりできあがりました。
箱の穴あけや、ゴム栓の穴あけと接続など、
ごく簡単な加工を施しただけですけど、けっこう優秀です。

なお、最近の私の学生への口癖は、
「無いもんは自分で作る!」
です。



できあがったので、
修士1回生の前田君と一緒に、本日試運転。

実験に先立ち、
ドラフトの中で、SiCl4の瓶を開けて、
緑のボトルに移し替えるとき。。。

 ふごっ!

って言いたくなる感じの、刺激臭が我々の鼻を襲いました!


SiCl4というのは、
空気中の水分と以下の反応を起こし、
 SiCl4 + 2H2O → SiO2 + 4HCl
塩化水素(HCl、塩酸)のガスを生じます。

そのため、強烈な刺激臭がするわけです。


たったの1~2秒のことなので、
身体にダメージはないのですが、
初めて臭いをくらったときは、精神的にダメージを受けます。

学生の彼は初めてのSiCl4だったので、ややダメージを受けていたようです。

若者よ、がんばれっ!

2013年10月12日土曜日

産業界の勉強

ウチの近くの分野の先生方が、
大阪で行われた電池討論会(10/7~10/9)へ出張されていた週ですが、
私は、同じ大阪でも、インテックス大阪で行われていた
粉体工業展へ出張してきました。


粉体工業展 @ インテックス大阪














展示会は、主に装置メーカーが、
企業間取引のために装置の展示を行っているところなので、
私のような大学の研究者の参加者は
あまりいないことと思います。

大型の製造装置は、
大学に置くようなスペースもありませんし、
製造したものを販売するわけでもありませんので、
実際、購入の対象と直接なるような装置は、ほとんどありません。


それでも、私が学会だけでなく展示会にも足を運ぶのは、

・分析装置は購入する可能性がある

・研究で扱っている対象の物質は、
 産業界ではどのようなパラメータが重要視されているか
 という情報がわかる

・工業的製造を行うには、どのような装置が使われているか
 という情報を持つことによって、現状の技術では
 どこまでが可能でどこからが難しいということを知ることができる

といった理由があります。


私は理学系ではなく工学系の大学教員ですし、
過去には企業に勤務していたことがあるので、
そういった工業的・産業的な視点から、研究内容を考えるというのは、
他の研究者よりも持っておかないといけない能力かと思います。

大学の中にいると、
なかなかそういうセンスが鈍りがちなので、
こういった展示会へ行って、情報収集などを行っているわけです。


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また、産業界に関するアンテナを張る活動の一環として、
私は自分で購読している日本経済新聞を、
読み終わった後は、研究室の学生共通デスクへ寄贈しています。

世間の情報を私も得たいですし、
学生にも触れておいて欲しいですしね。


今日、10月12日の朝刊です。














なお、私のイチオシは、「私の履歴書」

著名な方に、生誕から今までの半生について、
1か月かけて執筆をしてもらうコーナーです。

私にとっても、経済に関する記事はハードルが高いですが、
このコーナーは非常に読みやすいです。
一説によると、 日本経済新聞の中で、一番視聴率(購読率?)が高いコーナーだとか。


10月の連載は、
日本がほこるノーベル賞受賞者の利根川進先生ですので、
ウチの学生たちにも、研究者の考え方や経験を学ぶために、
ぜひ読みなさいと推薦しています。

利根川先生の半生。勉強になります。

2013年10月6日日曜日

装置紹介

なんとか、吉田キャンパスの引っ越しも一段落しました。

梱包に2週間、引っ越しに1週間、復旧に1週間。
1か月間かけて、やっと落ち着いた感じがあります。


グローブボックスも
クレーンで宙を飛びました



















学生部屋も落ち着き、ホッと一息















移動したのは、たった2つ先の建物だったのですが、
かなりの労力を費やしました。

移動前: 60番北側
移動後: 54番南側

ちなみに、同じ助成者の袴田先生は60番西側、
弓削先生は57番南側です。
もともと、ご近所さんです。















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せっかく、宙づりになった装置の写真を掲載したので、
成果報告はちょっと置いておいて、
私の研究で使っている代表的な装置を紹介。


まずは、電気炉

高温で反応を起こすのに使う装置です。


ボックス炉














縦型炉

















横型炉














高周波誘導加熱炉
















ボックス炉 → ある程度大きな容器で反応を起こすのに使用

縦型炉 → 液体の中に何かを抜き差しするのに使用

横型炉 → 温度勾配をつける時に使用

高周波誘導加熱炉 → 急速加熱や局所加熱を行うときに使用


上のように、目的や反応容器に応じて、使い分けます。
中に入れる容器も、金属にしたりセラミックスにしたりと、
実験で使う化学種などによって作り分けます。


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続いて、分析装置

原料や得られた生成物を分析します。



走査型電子顕微鏡(SEM)














エックス線回折装置(XRD)














エックス線光電子分光装置(XPS)














誘導結合プラズマ発光分光装置(ICP-AES)















SEM → 物質の表面形態を観察するのに使用

XRD → 物質の相を同定するのに使用

XPS → 物質表面の化学結合状態を分析するのに使用

ICP-AES → 物質中の不純物量を測定するのに使用


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上のような装置を使って、実験を行っています。

分析装置が揃っていると、
色々な角度で解析ができるので、
どのような反応が起こっているのかを、多角的に解析できる
ようになっていきます。


と言いつつ、
上の8枚の写真の装置のうち、
縦型炉以外は、現在耐震改修中の宇治の建物の中にあります。
そのため、
今は縦型炉だけを使ってできる実験をしているか、
もしくは学生の中には、今のうちに修士論文を書いている学生もいます。

工事が終わる日が楽しみですね。

亜鉛還元による太陽電池級シリコンの高速連続製造法に関する研究

安田 幸司
(京都大学 環境安全保健機構 助教)