実験後の残留薬品の処理という「裏」もあります。
四塩化ケイ素(SiCl4)の処理というのは、
廃試薬専門業者にとっては容易かもしれませんが、
小規模実験を行う研究室では、ちょっとやっかいです。
というのも、
四塩化ケイ素は空気中に出すと、
水分と反応して塩化水素(HCl)を発生するので、
下手をすると、
・ノドと鼻がするどく痛い
・周辺の装置がサビる
といった不具合を生じるからです。
このように、塩素成分がHClになるとやっかいなので、
水素(H)よりも強い陽イオンと反応させるのが良いです。
私が知るところでは、
水酸化ナトリウム(NaOH)を入れて水ガラスにしてから、
酸性に戻すと、ケイ酸と塩化ナトリウムになるので、
大学では無機廃液のタンクへ捨てることができます。
(ただし、京大の場合、ケイ素を含む廃液は他とは別容器)
しかし、それよりも簡単な方法があります。
SiCl4は構造的な対称性が高いことからもわかるとおり、
極性のきわめて低い化合物です。
そのため、水には溶けにくいですが、油やアルコールにはよく溶けます。
それにしたがって、
今日、研究室の過去サンプルから出てきたSiCl4を廃棄する作業は、
「SiCl4の封入されたガラス管を割った後、
真空ポンプ用オイルにガラス管を浸す」
のみでした。
液体SiCl4をそのままオイルへ |
オイルが反応して茶色くなるので、
あとは、廃オイルとして捨てれば終了。
反応が遅くて溶けのこったSiCl4が
ちょっと鼻に刺激臭を与えるので、
保護具着用の上、作業は必ずドラフトの中で行いましょう。