遅ればせながら、
私が行っている研究テーマについて紹介させていただきます。
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【概略】
助成をいただいているテーマは
『亜鉛還元による太陽電池級シリコンの高速連続製造法に関する研究』
と題しております。
すなわち、研究対象としては、
太陽電池に使用される高純度シリコンを、
「より高速に」「より効率的に」作るための条件を、
きわめて基礎的な実験から検討しようというものです。
【背景】
1990年代までは太陽電池市場の普及が進んでおらず、
市場も小さなものでした。
そのため、シーメンス法と呼ばれる方法でつくられた
半導体用の高純度シリコンのうちの、
端材部分を使うだけで
太陽電池用シリコンの供給が十分にまかなわれていました。
しかし、2000年代に入り、
ヨーロッパを中心に太陽電池の導入が進むと、
原料となる高純度シリコンの供給がひっ迫してきました。
以来、世界各所で、
シリコンの新しい製造法の研究開発が進んでおります。
現状、状況は解消され、
市場は供給過多な状態となっておりますが、
将来的な問題に対応するために、効率的な製造法を開発しておくのが、
エネルギー環境問題の解決のためには重要であると考え、
私のほうでも、同テーマに関する研究を行っております。
【研究方針】
シーメンス法が開発される前には、
四塩化ケイ素を亜鉛で還元する、
デュポン法と呼ばれる手法が、高純度シリコンの製造法でした。
一般的に、
SiCl4 + 2 Zn → Si + 2 ZnCl2
で表されます。
かつての工業的製造法をベースとして改良を行えば、
効率的な高純度シリコン製造法になるのではないか、
というのを究極的な目標とし、
本研究では、この反応の詳細な機構を解明することを目的としています。
私個人としては、
本助成に関する手法以外にも、
他の手法でも、色々と検討を行ってます。
どれが一番スジがいいかというのを見極めるため、
新しい手法を考える以外に、
学術分野に基づいた反応解析を行っております。
(もちろん、シリコン以外の他の金属の研究もしてますよ。)
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やや長々となりましたが、
またご質問等あれば、いつでもお聞きください。
2013年6月8日土曜日
2013年6月5日水曜日
装置改良と装置導入
先週は、修士2回生、板倉君との実験。
(今回も、本人からの名前と写真の掲載許可を得ました)
彼は、テルミット反応という、
金属酸化物を別の金属で還元し、
強烈な発熱反応によって瞬時に溶融状態の金属を作る、
という反応を研究しています。
化学式で概念的に書くと、
AO (金属酸化物) + B (還元剤金属)
→ A (製造された液体状金属) + BO (副生酸化物)
ΔH<<0 (強烈な発熱)
で表されます。
本助成のテーマではありませんが、
やさしい科学技術セミナーでは、テルミット反応のデモ実験を
企画していますので、ここで少し紹介。
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3月までは横型水平炉を使って実験していたのですが、
彼の反応系では、サンプルの量を増やした方が効率的に進むのでは、
という方向性が導き出されていました。
そこで今回、より大型の反応容器を使用するために、
縦型炉へと変更することに。
しかし、炉を変更したため、結局のところ、
・ 電気炉
・ るつぼ
・ 反応容器
・ フタ
のすべてを、今回変更することになりました。
炉と容器は、すでにあったものを流用し、
るつぼとフタは、ウチらで設計し、外注で作ってもらいました。
実験に至るまでに、色々な準備が必要なのです。。。
さらに、せっかく装置変更するのであれば、
発熱反応で、表面が何℃まで上昇しているかというのを
定量的に解析するために、
放射温度計を使ってサンプルの表面温度を測定してはどうか
というアイデアを出し、
今回、装置メーカーからデモ機をレンタルしました。
なお、今回うまく測定できたら、
放射温度計を研究室で新しく購入予定です。
(本助成テーマではないので、別予算で購入)
板倉君も、あれこれ装置をいじりながら、
改良を行っております。
彼のみならず、私にとっても、
新しい装置、新しい反応は、いつになってもドキドキです。
さて、彼は、
新しい装置でテルミット反応を起こし、
放射温度計を使って無事に測定をできたのでしょうか!?
そして、無事に彼は、
この放射温度計を購入してもらえることになるのでしょうか??
研究成果は、9月3日~5日の資源・素材学会で
発表予定にしています。
乞うご期待!
(今回も、本人からの名前と写真の掲載許可を得ました)
彼は、テルミット反応という、
金属酸化物を別の金属で還元し、
強烈な発熱反応によって瞬時に溶融状態の金属を作る、
という反応を研究しています。
化学式で概念的に書くと、
AO (金属酸化物) + B (還元剤金属)
→ A (製造された液体状金属) + BO (副生酸化物)
ΔH<<0 (強烈な発熱)
で表されます。
本助成のテーマではありませんが、
やさしい科学技術セミナーでは、テルミット反応のデモ実験を
企画していますので、ここで少し紹介。
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3月までは横型水平炉を使って実験していたのですが、
彼の反応系では、サンプルの量を増やした方が効率的に進むのでは、
という方向性が導き出されていました。
そこで今回、より大型の反応容器を使用するために、
縦型炉へと変更することに。
しかし、炉を変更したため、結局のところ、
・ 電気炉
・ るつぼ
・ 反応容器
・ フタ
のすべてを、今回変更することになりました。
炉と容器は、すでにあったものを流用し、
るつぼとフタは、ウチらで設計し、外注で作ってもらいました。
実験に至るまでに、色々な準備が必要なのです。。。
例えば、るつぼはこんな感じ。縦型炉の上から吊るす構造に変更しました。 |
さらに、せっかく装置変更するのであれば、
発熱反応で、表面が何℃まで上昇しているかというのを
定量的に解析するために、
放射温度計を使ってサンプルの表面温度を測定してはどうか
というアイデアを出し、
今回、装置メーカーからデモ機をレンタルしました。
なお、今回うまく測定できたら、
放射温度計を研究室で新しく購入予定です。
(本助成テーマではないので、別予算で購入)
装置のセット中 |
左からの固定が放射温度計。上からの観察はデジカメ。 |
板倉君も、あれこれ装置をいじりながら、
改良を行っております。
彼のみならず、私にとっても、
新しい装置、新しい反応は、いつになってもドキドキです。
さて、彼は、
新しい装置でテルミット反応を起こし、
放射温度計を使って無事に測定をできたのでしょうか!?
そして、無事に彼は、
この放射温度計を購入してもらえることになるのでしょうか??
研究成果は、9月3日~5日の資源・素材学会で
発表予定にしています。
乞うご期待!
亜鉛還元による太陽電池級シリコンの高速連続製造法に関する研究
安田 幸司
(京都大学 環境安全保健機構 助教)
安田 幸司
(京都大学 環境安全保健機構 助教)